不登校の子どもに精神科や心療内科への受診を勧めると、高い確率で拒絶されます。
中には「私が学校に行けないのが病気のように思われて悔しかった」と思う子もいます。
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しかし、一方で、自分から「精神科に入院したい」「薬を飲みたい」「心療内科に連れて行ってほしい」と懇願する子もいます。
その時、親はかなり迷います。
不思議ですよね。
自分から勧めるときは何も思わないのですが、子どもから言われると、「え?」と戸惑ったり、「そんなところに行く必要はないよ」と言ってしまって、かえって子どもとの関係が悪化してしまうケースもあります。
この「病院に行きたい」「入院したい」と思う子どもの気持ちの裏には何があるのか。
今回はそのことをお話ししたいと思います。
なぜ自分から病院に行きたがるのか?
まず、そもそもなぜ自分から病院に行こうとするのか。
行かせた方がいいかどうかを言う前に、その言葉を言ってしまった子どもの本音を考えないといけません。
私のカウンセリングでは、話を聴いて「止めたほうがいいですよ」「行かせたほうがいいですよ」と即答することはありません。
子どもの話をそのまま鵜呑みにしてしまって、子どもの言いなりのままに医療機関に連れていくというのはどこか違うと考えているからです。
もちろん、様子を聞いて医療機関での治療が有効だと思えたらお伝えすることもありますが、今のところ医療機関の受診を勧めたケースはほとんどありません。
それよりももっと大事なことをお母さんと話し合います。
それは「なぜ、子どもが病院に行きたいと思ったのか」ということです。
基本は、
子ども理解→どうするかを考える
です。
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この基本に沿って、「なぜ、そんなことを言ったのだろうか」をいろんな視点から考えていきます。
そこで親としても納得のできる子どもの本音が分かってくれば、「病院に連れていくかどうか」「入院をOKするかどうか」を考えていくことができるようになります。
次に、今までの経験から私が聴いた「子どもの本音ベスト3」をお伝えします。
ベスト3とは次の3つです。
- 親や家から離れたい
- 自分を変えたい
- 家にいたら自殺しそうなくらい苦しい
それぞれ見ていきましょう。
本音1:親や家から離れたい
まずよくあるのは、「親から離れたい」という気持ちです。
これはとりわけ家庭の中が落ち着かない、心がホッとできないときにはよく起こります。
「本当は休みたいけど、こんな家にいたら自分はどんどん壊れてしまう」
そういう思いから、家から出る手段として「入院」を選択するのです。
ちなみに、なぜ家の中が落ち着かないかというと、親自身が子どもの不登校についてモヤモヤした気持ちを持っているためです。
そして子どもを見るたびにイライラしながら「将来どうするの?」と小言を言ったり、ため息をついたり、落ち込んだりと言った様子を見せると、それだけで子どもの心はつぶれてしまいます。
要は親が子どもの心を支配しようとしているのです。
親の思いが先行してしまい、子どもをどうにかしようと考えると、どんどん子どもの心は壊れていきます。
「これ以上いたら自分が死ぬ」と思ったとき、「病院に逃げたい」と思うようになります。
本音1の場合に考えたいこと
この場合に考えたいことは、親の普段の関わりをどう見直していくかです。
子どものことを心配するあまり、かえって子どもを苦しめていた・・・なんてことがあったかもしれません。
ただし、これはかなりしんどい作業です。
自分のネガティブな面を整理していくのは、基本一人では無理です。
できればカウンセラーや親の会のメンバーと言った人と話し合いながら、少しずつ気持ちを吐き出しながら整理していくことが必要です。
時には涙があふれることもあるでしょう。
その中で、少しずつ自分の今までの関わり方を見つめ直し、その上で子どものことを理解し直していくという作業をご自身のペースでしていくことが大事となります。
本音2:自分を変えたい
また、こういった本音もあります。
それは「自分を変えたい」という思いから病院を選択する子がいるということです。
どういうことかというと、「今の自分の苦しさは病気のハズだ。だから治療すれば治るかもしれない」という考え方です。
え?と思うこともありますが、ちなみに大人でも「会社で失敗ばかりする自分を変えたいんだ。そのためには治療を受けたほうがいい」と言って、心療内科に行く人はいます。
で、うつ病や適応障害、発達障害と言った診断名が出たことで「やっぱり、これが原因か!」と納得はしますが、「じゃあ、これからどうしようか」と次の一手がわからないまま時間だけが過ぎて行っている人は結構多いのです。
心療内科で働いているとき、そうした人を少なからず見てきました。
大人でもそうなんだから、子ども、特に中学生くらいの子どもでもそのような発想をしてしまうことは珍しいことではありません。
要は自分の苦しさを病気のせいだと思い込みたいという気持ちが背景にあるということです。
逆に言えば、そこまで苦しいんだということです。
その気持ちをどう汲んでいくのかということが、親力として問われるところです。
本音2の場合に考えたいこと
この場合は、病院に行かすかどうかだけで済む問題にはなりません。
というのも、そうした気持ちをしっかりと聴いていくことで、この子の「どうにかして今の状況を打破したい」という気持ちを理解していく関わりが必要となります。
ただ、病院以外の選択肢を子どもに納得させるのは至難の業です。
そして、子どもが「これだ」と思う方向で、あまり問題がないと思えば、心療内科の受診や入院を試してみるというのは良い方法だと思います。
実際やってみて、「なんか違うな」と思ったら、子どもはそこで改めて考えます。
何もしないまま、良い方法を思いつくことはありません。
みんな失敗を重ねて正解を見つけていくのです。
そのあたりもぜひ子どもと話し合いながら、納得できるのであれば病院に連れていくということは許容範囲だと思います。
ただ、保護者と医師が相談できる病院が望ましいです。
そこで、医師の見立てや薬の調整などを話し合いながら、子ども理解を深めていくためのヒントが見つかることもあります。
本音3:家にいたら自殺しそうなくらい苦しい
最後は一番重篤です。
不登校やひきこもりの状態を楽だと考えている人は結構多いです。
でも、ちょっと考えて見てください。
同年代の子が学校に行って頑張っているのに、自分だけ家にずっといて、そして貴重な青春自体を浪費している状態。
これって本人の立場になってみるとわかるのですが、かなり苦しいです。
しかも、なぜそういった状況に陥ったのか、親や先生だけではなく、本人もわかりません。
これが原因だ!と思えたら楽なのですが、原因がわからないまま、時間だけが過ぎて行っている。
これって非常に苦しいことだと思いませんか?
その苦しさから逃れるために、ゲームをしたり、漫画や動画を見たりして過ごしているのですが、それだけでは逃げられなくなるまで追い詰められることがあります。
その時に、「このままだと自殺してしまう」と思うこともあります。
何とかそうならないように、親に「病院に連れ逝ってくれ」「入院させてくれ」と訴えるケースがあるのです。
本音3の場合に考えたいこと
この場合は、子どもの命の安全を優先して、医療機関につなげるという選択は正しいです。
しかし、病院というのは、あくまでも補助的なものです。
入院したから、薬をもらったからと言ってすべて解決するものではありません。
子どもの命を救うのは、他人ではなく、親子の絆です。
絆が深まることで、その子の心が癒されえ「大丈夫感」が醸成されることで、やっと死にたいという気持ちはなくなっていきます。
子どもの自殺を防ぐために必要なのは、「私が死んだらきっとお父さん・お母さんは悲しむだろう」という親への思いです。
子どもは親を苦しませたくはありません。
しかし、親が子どもを理解してくれないと、子どもは「わかってくれない、もう嫌だ」となって自死を選択します。
なので、病院で入院したとしても、変わらず子どものことを理解し続け、そして子どもの命を大事にしていく関わりをしていただきたいと思います。
面会には必ず毎日行きましょう。
「家族は大切に思ってくれている」
それだけで子どもの大丈夫感は醸成されていきます。
まとめ
今回は「入院したい」「病院に行きたい」と訴える子どもの心についてお話ししました。
ちなみに、私は精神科・心療内科については否定派でも肯定派でもありません。
子どもにとって役立つなら行ってもいいし、有害であれば行かない方がいい。
そういった考えです。
なので、子どもの気持ちをしっかりと聴いていき、そして話し合った結果、親としても行った方がいいと思えたのなら連れていく。
これが基本的な姿勢になります。
ただ、こんなことを書くとこんな声が聞こえてきます。
「それができないから悩んでいるんです」
そうです。
多くの親は子どもと話し合うことができない状態であることも多いのです。
その中で「病院に行きたい」と言われると、もうどうしていいかわからなくなってしまいます。
そうしたお母さんやお父さんに、一つ提案です。
もしよろしければ下記のセミナーに参加してみはいかがでしょうか?
無料で参加できますので、親としてどう子どもと関わったらいいのか、そのとっかかりが見つかりますよ。
ではでは、あなたのお子さんが明るい人生を取り戻せること、心から祈っております。
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