【国は不登校をどう捉えている?】令和3年の文科省の不登校の「有識者会議」の報告から感じること

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私は不登校支援の仕事を長年続けています。
特にお母さんのサポートをして行くためにはやはり国が不登校政策についてどのように考えているかを知る必要があります。
そのため、文科省の答申や議会の内容も目を通すようにしています。

今年の6月に、令和3年度「不登校に関する調査研究協力者会議」の報告が文科省のHPより公開されました。

不登校に関する調査研究協力者会議(令和3年度) 通知・報告書(令和4年6月):文部科学省

具体的には以下の以下の4つが今後の方向性として出されています。

  1. 誰一人取り残されない学校づくり
  2. 不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握
  3.  不登校児童生徒の多様な教育機会の確保
  4.  不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援

以下、詳しく見ていきたいと思います。

ちなみに参考資料は、
【別添1】 不登校に関する調査研究協力者会議報告書(概要)です。

① 誰一人取り残されない学校づくり

報告書では以下のように記載されています。

  • 教育機会確保法の学校現場への周知・浸透に向けた広報・啓発資料の作成や、教育委員会や独立法人教職員支援機構における研修の実施
  • 校長等のリーダーシップによる専門職を活用したチーム学校による魅力ある学校づくり
  • 児童生徒本人が様々なストレスやその解消方法、自らの精神的な状況について理解し、安心して周囲の大人や友人にSOSを出せるよう、養護教諭やSC等を活用した心の健康の保持に係る教育の実施。

私の印象


つまり、教育機会確保等をしっかりと周知した上で、教職員が不登校について理解ができるように研修をしていって、子どもが生き生きと過ごせる学校を作りましょう

ということです。

また、子ども自身もSOSの出し方やストレスの気づき方などの学びの場も取り入れていくということになります。

ちなみに、ここには記載されていませんが、GIGAスクールの観点から、ICTを用いて、子どものSOSを出しやすい環境を作るなど、今までにない取り組みについても触れています。

ただ、気になるのは、教育機会確保等についての周知が徹底されていないという現実です。

お母さんの話を聴くと、子どもが不登校になると無視をしてしまうような学校や、かえって「不登校になったのは親のせいだ」といわれてしまうこともあります。

また、子ども達の3割ほどが「不登校の原因や先生や教室の雰囲気」と答えている現実があります。

不登校の原因は学校に子どもが合わなかったことですが、その根本的な部分を「魅力ある学校づくり」と言う部分で、少しでも改善して行けたらいいなと考えています。

②不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握

報告書では以下のように記載されています。

・児童生徒が抱える課題の早期把握に向けた全児童生徒を対象とした、スクリーニングの実施及びスクリーニングにより課題を把握した児童生徒に対する「児童生徒理解・支援シート」を活用した支援策の策定
・不登校の早期段階において、教室とは別の場所で個別の学習支援や相談支援を実施するための「校内教育支援センター」の充実
・一部の学年を対象としたSCによる全員面接により、SOSを出せていない児童生徒を早期に把握するとともに、面接を経験することによる大人へ相談することの敷居を低減
・一人一台端末を活用し、児童生徒の健康状況や気持ちの変化を確認するなど、ICTを適切に活用した組織的・客観的な児童生徒の状況把握

私の印象

SCの全員面談と言う取り組みは面白いですね。
実際にそれを実施した学校は聴いたことがあります。

子どもが大人に対して心を開きやすくなったという成果があったそうです。


いうまでもなく、不登校支援の基本は適切なアセスメントです。
ただ、いまだに「学校まで行ったらタッチして帰ってくる」といった、ちゃんとアセスメントされているのかどうかわからない支援の話も聞きます。

また、SCやSSWについても非常勤職員という立場上、どうしてもスキルや人間性に格差が出るのが事実です。

よく不登校について、全く理解が乏しい方の支援を受けて、さらにしんどくなったお母さんもおられます。
「話を聴くだけで、意味がなかった」という話はよくあります。

この背景として、不登校の知識に乏しいということが挙げられます。

アセスメントを強化していくということはとても大切なのですが、実際にその子に合った支援を作れるのか、またニーズがない不登校の子がいた場合、どう支援につなげていくのかは今後の課題となりそうです。

ただ、一昔前は担任1人が抱え込むしかないという時代があり、それでうつ病から休職→退職に追い込まれた人もいます。

「チーム」で考えていくという視点が出てきているのは段々と時代が追い付いてきた・・・そんな印象を受けますね。

③ 不登校児童生徒の多様な教育機会の確保

報告書では以下のように記載されています。

  • 都道府県等による広域を対象とした不登校特例校(分教室型含む)や夜間中学との連携等を通じた特色ある不登校特例校の設置推進や指導体制の充実
  • 「不登校児童生徒支援協議会」の設置・活用等による学校・教育委員会とフリースクール等民間団体との対話の場を通じた連携促進
  • フリースクール等民間団体のノウハウを活用した公設民営の教育支援センターの設置等、教育支援センターの支援充実
  • 教育支援センターの機能を強化し、遠隔地や相談に繋がりにくい児童生徒へのアウトリーチ型支援やICTを活用した学習・体験活動、相談支援等を一括して行う「不登校児童生徒支援センター」(仮称)の設置促進
  • 学校外のフリースクール等民間団体や自宅におけるICTを活用した不登校児童生徒の学習状況を学校において適切に把握し、出席扱い等につなげていくための課題の分析や改善方法に関する調査研究の実施

私の印象


こちらもまだまだ課題の部分です。

昔ほどではないんですが、学校は閉鎖的な側面があるので、なかなか民間の支援機関との連携を積極的にしてる自治体は少ないのが現状です。

まあ、学校の先生自体が忙しくてそういう時間がないという実情もあるのですが・・・。

また、昔からの課題として、都心部ではいろんな支援を受けやすいのですがが、バスがないと学校に行けないほどの田舎だと、なかなか子どもが通所できる場所ができにくいという課題もあります。

また、フリースクールは民間である以上とても高額です。
そのため、「経済的に行き詰っていて困っている」といった声も聴きます。

この部分は国も本腰を入れて、不登校支援に乗り出している、
いわば国の本気度を感じさせました。

特例校の設置はその先駆けでしょう。
実際、不登校特例校はどんどん増えて来ていますし、その分、国の補助もたくさん出ます。

また報告書では、「不登校児童生徒支援協議会の設置を通して、連携がスムーズに行けるような取り組みをするように」と促しています。

もちろん、国の支援は限界があるのでこぼれてしまう子もいますが、「子ども達のことをいろんな角度から支援をしていこう」とする国の思いを感じました。

④ 不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援

報告書では以下のように記載されています。

  • 教員養成段階における教員の教育相談スキルの向上や、SC・SSWによるオンラインの活用等による教育相談の充実
  • 関係機関等が連携したアウトリーチ支援や保護者への支援も視野に入れた家庭教育支援の充実
  • 学校復帰のみにとらわれず、不登校児童生徒の将来を見据えた社会的自立のため、多様な価値観を認め、児童生徒の目標の幅を広げるような支援の実施

私の印象


オンラインの教育相談の活用はいいですね。

ただ、オンラインは対面とは違ったスキルが要求されます。

また、困窮世帯では、オンラインが使えない環境であることも多い為、当然限界はあります。

ただ、こうした取り組みを通して、少しでも子どもたちが社会につながるきかっけができればいいのかなと思います。

ちなみに、家庭教育支援の充実と言うのはいいですね。

実際に、不登校の保護者の悩みの1・2位に当たるのが「子どもとどう関わっていいかわからない」「どうしていいかわからない」ではないかと、今までの臨床経験から感じています。

その時に、「不登校の子どもだと、このときはこうしたらいいよ」と悩みを聞きながら適切に助言ができる専門家がいるといいですね。

今回はペアレンツキャンプさんがそうした提言をされていました。

ただ、これをしようと思うと、どうしても民間の支援機関に頼らないといけないでしょう。

教師やSCなど学校の中にいる人は、どうしても「学校にどう戻すか」という視点で考えてしまうため、不登校の子どもの気持ちがなかなかつかめないという実情があります。

ちなみに、学校現場への通達の文書では、親の会の連携とかが入っています。

実は不登校の子どもをずっと見てきたご家族の方のスタンスや姿勢、関わり方は、学べることがたくさんあります。

私も親の会に参加する中で、様々な気づきを頂きました。

正直、学校だけのノウハウでは不登校支援には限界があるのです。

民間機関や親の会など、外部の方がどんどん学校に入り、共同しながら子どもたちをサポートしていく・・・

そんな未来が実現できればいいなと思っています。

まとめ

以上、今回の報告書を読んで、私なりに感じたことを書き連ねてみました。

正直な感想を言うと、国も不登校の子どもについて一生懸命考えていると改めて感じました。

また、学校だけでは難しいため、外部の支援機関や専門家と協力しながら進めようとしているという点で、これからもいろんな風が吹いてくるんじゃないかと思います。

ただし、気になるのは、2017年に教育機会確保法が施行されたにもかかわらず、5年経っても「学校現場への周知」という文言があることです。

つまり、まだまだ不登校について、国がどう考えているかを知らない学校や教師は多いということです。

未だに、「どうやったら学校に戻せるのか」と言う視点で子どもと関わろうとする先生がいるのはそのためでしょう。

(もちろん、その子が「学校に戻りたいんだ」と真剣に思っているのであれば、多少強引でも学校に戻そうとする支援も大事です。

ただ実際には学校側が原因で不登校になったにも関わらず、「学校に行かせよう」とするため、余計悪化する子もおられます。

要はアセスメントの問題です)

今回の報告書を契機として、学校現場が不登校をしっかりと理解し、「学校復帰ではなく社会で幸せに生きていく」という本当のゴールに根差した教育が展開されることを願ってやみません。

また、今後ともこうした国の方針や考えについても、随時発信していきます!

ではでは、失礼いたします。

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